そして。
組長さんの「ケロ!」という呼び声に「はーーーーーーーい」と会場からちょっと笑いがおきてしまうほどに長いお返事をして。
紋付袴姿の汐美真帆が姿をあらわした。
ゆっくり階段をおりる。一度も下を見ずに。劇場全体を見渡しながら。ムラの時はマイクの前で見渡してたけど、東宝では階段をおりながら見渡すことにしたのか。
ムラよりもお化粧の男役度を低くしたのか、袴姿とチグハグにはならない範囲内におさまっている。
大きな拍手。エンディーと檀ちゃんからお花。白の胡蝶蘭だけの、長い豪華なもの。

そして。
わたしたちへの、メッセージ。
「過ぎ去った時間はもう戻らないけれど、育んだ愛しさの記憶は残り、胸の中で、いつかプラチナになります」
そう、わたしたち、ケロファンだけにわかる、共有した空間を思い起こさせるメッセージ。
「我が人生幕が開く。新しい人生に向けて、歩んでゆきます」

ディナーショー。血と砂。こんなことを言われて、泣かずにいられようか。ケロちゃん、ずるいよ。

あと何だっけ。ここまでの部分も歌詞そのままを除いて自信ないです。明日スカステのニュースで全然違うこと言ってたらどうしよう。こっそり直せばいいか。
何だっけ。他にも歌詞や台詞ちりばめられてたのかな。最初の一言だけでもうダーっときてしまった。しっかり聞かなきゃいけなかったのに。
「ありがとうございます」って言ってから「まだ見ぬ未来へ、行ってまいります」で締めたのは覚えてるんだけど。ありがとうございます、の前は何だっけ。
ああ、自分の記憶力の悪さがうらめしい。明日の7時のニュースを待つしかないか。

(28日追記。ニュースを見て余りの違いにこっそり直すことすらできません。もうなんか概ねガセネタ流した気分。ごめんなさい。著作権とかまずいのかもしれませんが以下全文です。
「失った時間はもう戻らないけれど、育んだ愛しさの記憶はいつまでもいつまでも私の心の中に、そしていつの日かプラチナになることでしょう。我が人生幕が開く、明日から新しい舞台が始まります。同じ時間をともに生きた全ての皆さんに、今まで本当にありがとうございます。そして、まだ見ぬ未来へ、行ってまいります」)

ジェンヌさんの退団挨拶はたいてい「ありがとうございました」で終わるから「行ってまいります」での締めはなんとなく座りが悪かった(笑)。拍手が入るまでに微妙な間があった。それでも本人の清々しさ、潔さを見てると、ああ、こういう風に締めたかったのね、と納得いく部分もあったり。まあそれ以前に、本人がニコニコしてるのが悔しいくらいに、泣かされていたし。

つづいてみっこさん。こちらはムラ楽と同様感極まっている様子。でも落ち着いて、ゆっくりと話されていた。お手紙もムラと同内容だったけれど、ご挨拶も同じような感じだった。

ワタさんのご挨拶。ああ、何ていってただろう。退団者のことも言ってたけれど。ごめんなさいワタさん、ケロちゃん見つめるのに必死で覚えていません。

ケロちゃんはひたすら清々しくて。音楽が入る。あれ?曲は何だった?さよなら宝塚だったっけ?
トウコちゃんの手を握る。ムラ楽のときはトウコちゃんが泣き崩れるのを見かねて、っていう感じだったけど、今度はケロちゃんのほうが握りたかった感じに見えた。(いやトウコちゃんボロ泣きみたいでしたけどね。)ケロちゃん当たり前のように手を伸ばしてて。握ったままで手を振るのもムラと同じ。
ただ今度はカーテンコールで幕が再度あがってもまだ手を繋いでるということはなかった(笑)でもすぐまた握るんだけどね。
2回目のとき、幕が上がると舞台上は退団者とワタさんの4人だけ。ワタさんが3人を押し出そうとするんだけど、ケロちゃんがワタさんの手をとり結局4人一緒に前に出てお辞儀。それから、ワタさんが「何か言い残したこと無いの?いいのよ言って」というようなお尋ね。3人ともそれぞれに「大丈夫です」って言ったあと、みっこさんが「この、星組が、大好きです」と言ってケロちゃんもカノチカちゃんもうんうんとうなづいていた。ケロちゃんはとにかく幸せそうだった。

 ☆

出待ち。ものすごい人波。これだけの人たちがケロちゃんを見送りに来ている。もちろんケロちゃん目当ての人ばかりではないけれども。でも本人にとっては何と幸せなことだろう。

シャンテ側に2列になってガードに入る。後ろにはみっこさん会、更にその後ろに開演中からガードの場所取りをしていてくれたのであろうトウコちゃん会が何列か。歩道にはカメラを構えたギャラリーが何重にもなっていて。だから結果的に車道はかなり狭くなり、劇場側の歩道と合わせても、いわゆる「花道」はそんなに幅がないものとなっている。ということは結構近い位置をケロちゃんが通るということか、と妙に緊張。

何の前触れもなく、お花を持った紋付袴のかのちかちゃん登場。かのちかちゃんの会は楽屋口近くの位置だったらしく、そこでエールを受けてからこちらに歩いてくる。かわいいかわいい。かわいすぎてどうしよう。丁寧に左右に頭を下げながらゆっくり歩いていく。ちょっと驚いたことにオープンカーで去っていった。

かのちかちゃんは行ってしまった。次はウチだ。もう来てしまうのか。終わってしまうのか。楽屋口を注視する。ドアが開くたびにどきどきして。何度かの空振りのあと、楽屋口の中で歓声らしき声。ああ、あの人が見送られている、愛する仲間たちの歓声に。

ケロちゃんが現れた。手に持った胡蝶蘭と同じくらい白い肌。美しい、透き通った笑顔。手を振りながら、うなずきながら、ゆっくりとこちらに歩いてくる。一生懸命拍手。もはや拍手でしか感謝を伝えられない。目の前を通り過ぎてゆく。まぶしい。美しすぎて、またお茶会のときの遠いオーラをまとっているように見えて悲しくなる。遠ざかってゆく。歓声。フラッシュ。笑顔。泣き声。

いちばん端、芸術座前の曲がり角に到達してこちらに向きなおるケロちゃんにむけて「男役、汐美真帆ここにあり!14年間お疲れ様でした!」。自分も参加してて何だが、この長い列の大人数での掛け声がよく揃うものだと驚く。ケロちゃんは「皆様の愛を胸に、絶対に、幸せになります!」と言ってくれた。絶対に幸せになる。「み」さんの書かれていた「幸せは意思」を思い出す。しばらく公的な写真を撮っている様子。(このときはそんなこと想定しなかったのだが27日のサンスポにこのときの写真入りで記事が載っていた。嬉しい。)それが終わって車に乗り込む前、もう一回何か叫んでいたが、最後の「まーす!」しか聞き取れず。隣から伝言のように回ってくる。「汐美真帆、卒業いたしまーす」だって。そう、卒業なんだ。そして投げキス。いつもの赤い車に乗り込んで去ってゆく。最後まで一生懸命手を振る。行ってしまった。暖かい、愛のある卒業式。不思議と涙は出なかった。

  ☆

2列になったままはけ、そのまま誘導にしたがって集団でフェアウェルパーティ会場へ移動。真っ白の200人くらいの集団が夜の日比谷を移動してゆく。さぞかし異様な光景だったろう。仕方が無いこととはいえ、みっこさんを見送れなかったこと、ワタさん檀ちゃんトウコちゃんはじめ星組子皆に感謝の拍手ができなかったことがすごく心残り。本当に、今の、このメンバーの星組での退団公演は、ファンにとっても幸福だった。

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