ケロちゃんの退団発表があった、去年の9月2日。ネット上、匿名掲示板系で何度か見かけた言葉がある。

「贔屓が退団したときよりショック」

正直なところ、違和感があった。いや、まあ、惜しんでくださるのはありがたい話なんだけど(どういう立ち位置だ?)(でもヅカファンってそういうものでしょ?)(←kineさんサトリさんの一人突っ込みを真似してみました)。

贔屓の退団よりショックってのは大げさなんじゃ?って心の中で首をかしげてたんだ。だってヅカファンたるもの、贔屓の退団発表こそが最大のショックでしょう?
別にそれで腹を立てるとかそういうことではなく、単純に疑問を感じていた。

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2月10日、その疑問が解けた気がした。

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贔屓の退団発表っていうのは、常に自分の中でシミュレーションし、身構えてる部分がある。
でも、贔屓というほどではない、ただ「大好き」っていう人の場合、今の状態がずっと続くような気分になってて。
だから、衝撃度は高くなるんだ。
トップさんといった立場ではない、「ずっとそのまま」が可能なポジションにいる人の場合はなおさら。
トップさんなら、就任したとたん、いや、就任が発表されたときから任期が取りざたされてしまうから、特に贔屓じゃなくてもどこかに心構え・予想はできてる。

そっか。そういうことか。

2月10日、夕方。札幌への出張からの帰途、札幌駅から新千歳空港へ向かう電車の中で樹里ちゃん退団の知らせを受け取り、座席にへたり込みながら漠然とそんなことを考えていた。

かといって、9月2日よりもショックだったかというと、それはよくわからない。9月2日にはショックを味わう余裕もなかったという側面もあって。12月の休みの確保、11月8日は休めるのか?舞踊会っていつだっけ(結局行かれなかったけど)。チケット資金どうしよう。やらなきゃいけないこと、考えなきゃいけないことがたくさんあったから。
ただ、9月2日よりも「驚いた」ことは確かだ。今から思えば、昨年休演しているのだし予測できない話ではなかったはずなのだが、樹里ちゃんの退団は全く想定外だった。

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樹里ちゃんは、私にとって特別な存在だ。

多分雪組「黄昏色のハーフムーン」東京公演の時だったと思う。(月組「川霧の橋」かも?)。ヅカファンになったばかりの私は入り出でカメラ小僧をしていたんだが(笑)、名前も知らない下級生に「お願いしまーす」とカメラを向けたら(ごめんなさい・・・)びっくりするほどとびっきりの笑顔が返ってきた。それが、研1で組回りしていた樹里ちゃんだった。一緒にカメ子していた友人はこの笑顔ですっかり落ちてお手紙を出し、数年後FC発足時入会メンバーとなることになったほどだ(笑)

それからずっと気になる存在だった。
大体が76期には思い入れがある。自分がヅカファンになったときの初舞台生って何となく気になりませんか?76期は純ちゃんとユウコちゃんの初舞台抜擢のせいもあって注目を浴びていたし、美しかったり実力があったり面白かったり、個性的なメンツが多く、舞台上でも目立っていたように思う。

新公で初の大役が若央ミツエ先生の役だったこともあり、ミツエちゃんみたいな、便利な実力派別格スターさんになるのかな、と思っていた。いわゆる「○番手」という風には扱われないんだろうな、(余談だが、昔は「路線」「非路線」なんていうミもフタも無い表現はしていなかったように思う。自分が初心者で知らなかっただけかな?)という感じがあり、残念にももどかしくも感じながら、でもどっか押し出しの弱いところがあるもんなぁ、仕方ないかもな、と思っていた。でも、歌とダンスの実力はもちろんのこと、飄々としつつも明るく暖かい舞台姿が大好きで、観劇時はいつも追っていた。
ぶっちゃけ、「黒い瞳」の東京公演時なんて、ケロちゃんを観ながら「この役って大劇はあやちゃんだったんだよな〜、ケロちゃんもまあ良いけど、あやちゃんで観たかったなぁ」と思っていたほどだ。ははは。ケロちゃんごめんなさい。(ちなみに前出の友人はこの頃すでにヅカからすっかり足を洗っていたが、彼女の影響で私にとっても樹里ちゃんは「あやちゃん」だった)

専科制度が発表になったとき、私はちょっとヅカファンから離れていた。年に何度かは観劇していたけど、人事情報とかには疎くなっていたし、興味も薄くなっていた。だから専科制度について新聞発表で初めて知ったとき、制度そのものには「ふーん」という感じだったのだが、「樹里咲穂が3番手になっていた」ということに衝撃をうけた。すごい、知らないうちに出世してたんだあやちゃんっ!と興奮したのをはっきり覚えている。

ケロちゃんに落ちてヅカファン完全復帰してからも、樹里ちゃんは「観劇理由となるジェンヌさん」だった。樹里ちゃんが出てるから観とかなきゃ、と観に行った公演(なんだかんだでほぼ全公演観るんですけどね。)が沢山ある。

研1からずーっと見守ってきた、と言える初めてのスターさん。緑野師匠とは別の意味で「初めての男」でした。

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私の観劇理由がどんどん減ってゆく。減る分だけ増えてくれればいいんだけど、なかなかねぇ・・・。

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